繊細な色と影は、多くの工程を通って仕上がります。
木版のひと彫りごとに、バレンの動きひとつひとつに心をこめて、繰り返し色を重ねあげひとつの作品が創りだされるのです。
作品「夕暮れ」では、板は14枚で出来上がりますが、一枚の板で“板ボカシ”“ゴマズリ”など数回用いたり、異なる色を一緒に彫る場合もあり、完成までに結局23回刷ることになります。日本の伝統的浮世絵の技法を取り入れ、木膚の香りと、和紙の暖かさの中で制作していく歓びは、私だけのものではなく、版画を愛する皆さまの歓びともなることを願って。 井堂雅夫